サイレント・パワー・・・・・・静かなるカリスマ

サイレント・パワー・・・・・・静かなるカリスマ

サイレント・パワーを身につければ、流れに沿って生きることができる。流れるように生きれば、あら揺ることをシンプルにとらえることができるようになる。そして、すべてをシンプルにとらえることによって、心の安らぎが得られるのだ。  (12p)


ほとんどの人の人生は、(略)何かを切望し、夢見て、焦がれ、いつも人生に寄りかかっている。自分自身や、自分に与えられているものに満足出来ない。だから、他人に自分を持ち上げてもらおうとする。特別扱いされたいと思い、簡単でインスタントな人生を求める。
だが、寄りかかることによって、感情のバランスを失い、次々に刺激を求めて流されるようになってしまう。バランスや自己コントロールは、いつも非常に危うい状態にある。だから、何気ない批判や、ちょっとした挫折などといった逆境が訪れただけで、エネルギーが破綻してしまう。

サイレント・パワーを強化する第一のステップは、寄りかかることを止めるように自らを律することだ

まず第一に、自分のものでないものに寄りかかるのを止めることだ。ないものねだりをする時間があったら、その代わりに、目標を立て、ヴィジョンを明確にし、後は行動すればいい。l

第二に、未来に寄りかかって、いつも先のことばかり話すのは止めよう。その代わり、毎日、「今」を特別なものにするための時間を持ち、現在持っているものや、達成したことに感謝するのだ。

第三に、他人に何も要求しないですむような人生を設計しよう。自分で手に入れることのできるものだけを求めるようにするのだ。感情的にも現実的にも、人から何かを吸い取ろうとしてはいけない。  (30p〜32p)


サイレント・パワーの最初の重要なステップは、寄りかかるなということだ。当たり前のことだが、ほとんどの人はそれに気づいていない。狂ったように人に何かを求めるとき、その欲求は絶望のオーラを醸し出す。それによってあなたは弱くなっていくし、色々なものがあなたから離れていってしまう。  (34p)


サイレント・パワーを身につけるには、相手と反対の態度をとることが必要になる場合がある。人が寄りかかってきたときには、あなたは一歩下がる、人が大騒ぎをしているときには、あなたは静かにしている。人が走るとき、あなたは歩く。自分をコントロールし、安定感を醸し出すのだ。自分ではまだ自信がなくても、弱さを見せてはいけない。強くあれ。勇敢であれ。心が動揺することがあっても、その場では堪えて、後からそれに対処するようにするといい。最初のうちは、心を完全に安定させることはできないだろう。だが、それでも外見的には十分に安定しているように見えるものだ。自分の力とコントロールを匂わせる行動をとるように心がけることで、やがて内面のパワーも得られる。
あなたが安定することで、周りの人たちも安心感を感じることができる。だから、彼らのほうからあなたを求めてくるようになる。そうなれば、人生は楽になり、気分的にもずっといい。賢者になれ。平静を保ち、沈黙を守れ。エーテル的にまっすぐに立つのだ。自分の知っていることの中にとどまれ。足るを知り、欲求を持ちすぎるな。自分自身に向き合うのだ。 (36〜37p)


人々がサイレント・パワーを発揮出来ない理由は、ほとんどの場合、身の安全を人生の最優先課題に置いていることによるのだ。エゴは、生き残ることに重きを置いている。誰もがそのことだけに必死になっている。身の安全を守るという課題が、心やすべての行動、発言のほとんどを支配している。しかし、それはあなたの力を衰えさせてしまう。(39p)


自分のパワー野中にとどまるのだ。そこが最も安心できる場所だ。エゴをコントロールすることに努めよ。脆弱なこの世の中から、不滅で磐石な精神界へと住み換えるのだ。そこでは、自らの内に永劫を感じることができる。不安はだんだんと解けていく。人生に抵抗するのではなく、ありのままに受け入れることができる。そして、死も失敗も存在しないのだということに気づくだろう。できるだけ人生に歯向かわず、波に乗り、大いなる喜びをもって、至高の理想へと流れていこう。(41p)


個人的なことはあまり詳しく人に話さないようにすること。神秘的で、静かで、なぞめいた雰囲気を、あなたの人生に身につけるようにするのだ。深いところにある、最も内なる自己を、決して人に知られないようにする。友人と話をしたいときもあるだろう。そういうときにも、おおむね自分のことはしゃべらないようにする。どうしても自分のことを話す必要のあるときには、できるだけ一般的な表現を用いる。そして、聞かれたときだけ答えるようにする。もちろん、仕事で自分のスキルについて説明するときなど、状況によって自分のことを話さなければならない場合は
やむを得ない。だが、そういうとき以外には沈黙を保つように心がけるのだ。
人に支持を与えるときや、例えば、しつこく言い寄ってくる人と距離を置くために自分の思いを伝える必要がある場合もあるだろう。そういうときには、注意深く言葉を選ぶことだ。パワフルな人は言葉を浪費しない。無駄口をたたいたり、話を脱線させたりせず、言いたいことを十分意考え抜いた上で、その考えを簡潔かつ目的を持って表現する。簡潔に話すことこそが、最もパワフルな話し方だ。
次に、人と会話をするときに、対等に話すのでも、まして見下げるように話すのでもなく、心理的に相手の下に入るようにしてみる。説明しよう。あなたが見下げるように話せば、相手は自分が劣っているように感じ、押し売りされたような、考えを押し付けられたような印象を受けるだろう。会話の内容だって、あなたの体験談ばかりが注目をむさぼるように延々と続く。
中国に旅行したという話をされれば、「中国ならば俺はもう19回も行っている」とすかさず答え、相手の上に立って競おうとする。賢者には競う必要などない。賢者は、永遠であり無限であり、万物に属しているのだ。すべてを含む「万物」の中にあっては、高い低いはない。競う必要などないのだ。ただ存在しているだけで、それで十分なのだ。(46〜48p)


あなたのエゴが、相手に寄りかかったり、相手を押しのけたり、強制しようとしたりしないとき、相手からより多くのことを学ぶことができる。相手を愛し、助けてあげることもできる。そうすることによって、あなたは、どっしりとした雰囲気や、強い性格を印象づけることができる。あなたがいるだけで周りの人たちは安心できるようになる。まさにそれこそが、サイレント・カリスマ―サイレント・パワーなのだ。  (51p)


バランスを崩すようなことをしないこと。自分の能力の範囲にとどまること。そして、宇宙の法則(タオ)が、必要なものを運んできてくれるのだということを信じること。無為とは、運命を委ね、忍耐し、物事が自然に開花するのを判断できる能力のことだ。無為とは、どちらに進めば自分にとって一番いいのかを判断できる能力だ。そんなに難しいことではない。自分は今、どんな選択肢があるのか、それを瞑想してみればいい。そして、どの道が最も力強く感じられるかを判断する。論理的な判断ばかりではなく、フィーリングをも信じて行動することだ。

無為とは、諦める能力でもある。退くことは、時として、最もパワフルなスキルとなる。物事がうまく進まないときに、きっぱり別れることのできる能力だ。あなたの価値を貶めるようなことや、あなたの精神性に合わないようなことや、社会的、道徳的に見て適切でないようなことをだれかが無理やりあなたにさせようとしたとき、きっぱり「ノー」といえる能力だ。
「ノー」と言えるならば、あなたは自由だ。もし、ある仕事をどうしてもしなくてはならないとか、誰かの友情を勝ちとらねばならないとか、来週の火曜日までに50万円を工面しなくてはならないと言うのであれば、あなたは自由ではない。監獄にいるのと同じだ。
つまり、無為とは人生をありのままに受け入れることであり、ああしようこうしようと無理強いしないことなのだ。訪れては去っていく季節の姿、万物の背後にある霊的な存在、豊かで偉大なる神の力。それらを知れば、何かを焦る必要など少しもないのだということが分かる。行動すべきタイミングを見極めること。もし、いつ行動していいかわからないのであれば、行動するのを控えることだ。必要ならば、永遠に待てばいい。あなたは永遠の存在なのだから。
無為とは、今の自分や、自分の立場に満足すること。今、自分が持っているものに満足すること。本当に価値のある経験や人間関係、あるいは豊かさといったものは、あなたの心が落ち着いたときにはじめて訪れるものだ。あなたのバランスがとれたとき、宇宙が与えてくれる。宇宙はいつだって与えるべきものを無尽蔵に持っているけれども、それらを押しつけたり、無理強いしたりしない。それが無為のやり方なのだ。
沈黙を守り、抑制の利いた人間であれ。あなたを縛り付けるものから離れ、自由に向かって淡々と歩んでいくのだ。計画性を持ち、忍耐強く、目標に向かって一歩ずつ歩んでいこう。
無為とは理想や目標を実現化する上で妨害となるものと出遭ったら、それを避けて通れる能力のことでもある。
人生が思い通りにいかないとき、まずは自分自身に質問をしてみよう。「私は適切な場所にいるか?」「タイミングが早すぎたり、あるいは遅すぎたりはしないか?」「急ぎすぎてはいないか?」「忍耐は足りているだろうか?」「目標を実現するのに必要なエネルギーを蓄積するために、もう少し時間をかけて自分を鍛える必要があるのではないだろうか?」「現実的でない、あまりにも遠くのものを求めているのではないだろうか?」「今の私にとって、もう少し近いところに目標を設定するべきではないだろうか?」
自分に聞いてみよう。「私が求めているものは妥当なものだろうか?」「私の計画は他人を侵害するものではないだろうか?」「人をありのままに受け入れず、その人のやりたくないことをさせようとしているのではないだろうか?」(略)
「彼らの協力を求めてばかりいるが、私自身は彼らをハッピーにしてきただろうか?」「私は自分を甘やかしているのではないだろうか?」「私が求めていることは、私が成長し、よりよい人間となり、充実した人生を実現する上で、役に立つことだろうか?」「あるいは、私はただ怠けているだけのことではないだろうか?」
あなたが求めていることの多くは、役に立たない足枷に過ぎないということを覚えておくといい。それはあなたが自分で創り出した地獄だ。物質的なもののほとんどは、あなたにとって重荷となる。いつもそのケアをしたり、心配をしたりしなければならないからだ。    (72〜77p)


何かを悟るということは、その責任を負うということだ。あなたが無限であるということは、あなたはどこにでもあまねく存在しているということだ。だから、あなたはどこにでも行くことができる。そして、あなたは万物の内にあり、万物に影響を与えることができる。(112p)


もし、あなたが安定していて、明確な意識を持ち、感情をコントロールできていれば、あなたには自信が芽生え、その自信はあなたのエネルギーに安定をもたらす。その安定は、通常のコンランしたエネルギーとははっきりと異なる。統一された心とサイレント・パワーこそが、あなたの防御だ。統一と自己コントロールこそが、あなたを守ってくれるものなのだ。(116p)

あなたが人類に愛を注ぎ、流れに乗って抵抗をしないのならば、あなたに向けられたエネルギーは、あなたを通り過ぎて言ってしまう。あなたの中に攻撃する場所がないからだ。あなたが物事をスピリチュアルにとらえ、愛を与えているからだ。低次元の破壊的なエゴの世界と波動が一致していないからだ。(117p)

最大の防御は、他人に対する批判や判断をできるだけ控えることだ。恨みや、憎しみ、反感を持たないようにしよう。防御すべきものを持たないことこそ、最大の防御だ。批判したり決め付けたりしないことで、現実に縛られないようになる。(117p)



完全に安定していると感じられるまでは、自身を持てといわれても難しいかもしれない。けれども、本当に自分のものになるまでは、そのフリをすればいい。沈黙を守り、寄りかからず、押しつけず、切望せず、感情の反応をコントロールすることで、あなたは自らの心の支配者となる。まだ完全にサイレント・パワーが身についていなくてもいい。サイレント・パワーを演じればいいのだ。
諦めてはいけない。人知れず自分の弱点に取り組み、自制心とカリスマを育てるのだ。計画性を持ち、人の助けなしに自分だけでできることを行う。自分の人生を自分自身のものにするのだ。知識は力だ。そして、口に出さない知識こそが、サイレント・パワーなのだ。
無駄なことをせず、常に自分をコントロールする。内的な自己、および自然とひとつになるのだ。人生を浄化し、あくを取り、清潔にし、無駄なものを捨て、シンプルに徹する。ある朝、目覚めたときに、サイレント・パワーがあなたのものになっていることに気づくだろう。そうなれば、自分の中の不安から目をそらす必要はもうない。不安など、自然に溶けて消えてしまう。 (120〜121p)


老子小川環樹著(中央公論社)