甘えのルール―赤ちゃんにあなたの愛情を伝える方法

甘えのルール―赤ちゃんにあなたの愛情を伝える方法


 「生物生理学」では、あらゆる「刺激」を「エネルギー」と捕らえます。「エネルギー」は、生命を良くも悪くも成長させていく力です。「刺激」は、生命体を取り囲んでいる全てのものです。物理的な刺激も精神的な刺激も両方、皮膚を触ったりつついたりする刺激もあれば、温度や圧力や湿度も刺激ですし、話している相手の態度や表情が不快だとか、名画を見て感動するという刺激もあります。
 このとき、ある「刺激」がどんな「エネルギー」に転換されるか━その転換のされ方に心のつくられ方の問題があるわけです。同じ電車に生理的に嫌悪感を感じる男が乗り込んできたというとき、「私のそばに来た!イヤ!」と感じるか、「あと5分したら私の降りる駅だわ。そうしたらもうこの人とは会わないですむわ」と考えるか。
 同じ刺激でも、受ける側がマイナスの刺激だと思って受け取ると生命体は縮みます。プラスの刺激だと思って受け取ると、生命体はぐんと成長します。ですから刺激の本質は、生命体を活かしも殺しもするエネルギーなのです。受容体がどうキャッチするかでエネルギーの質が変わる━いわゆるプラス思考、マイナス思考の本質もここにあります。
 その刺激を私たちは六感覚でキャッチします。聴覚、嗅覚、味覚、視覚、平衡覚、触覚です。私たちはその首から受ける五感覚だけを重要視してきました。生物生理学はそこで抜けた触角、体性感覚の大きさを私に気づかせてくれたのです。
 近年は植物も言葉を理解するとか、聞かせる音楽で草花の成長が違うとか、養殖の魚の餌づけに音楽を使うとか、牧場の牛の搾乳時、音楽によって乳の量が違う、ということがだんだん知られてきました。
 これは、動物や植物が言葉を理解するとか音楽がわかるという意味ではなくて、彼らは音を「振動」として実に高感度で捉えているということなのです。その結果、心地よい振動が成長を促すことになるわけです。その領域の研究者や現場の観察の深い人たちには、昔からよく知られたことでした。イルカやシャチが広範囲に実に高度な通信能力を持っているのも、振動をキャッチする能力が非常に高いためです。
私たち人間の子育ても、全身の触角の働きを再認識しなければなりません。